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なぜメキシコ人は本を読まないのか【メキシコ・娯楽事情】

 

※今週一週間は過去のメール焼き直し【海外生活】ネタを掲載中!※

 

Date: Fri, 30 Dec 2005 06:41:47 +0900 (JST) 

Subject: メキシコ・娯楽事情

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(前略)さて、それほど信心深くはないものの一応カトリックの国であるメキシコ、去年は原因不明の咳に苦しめられ友人Cの家のパーティに行けずベッドで過ごしたクリスマスを、今年はAの家族たちと過ごすことができました。

しかしその晩餐が始まったのが24日深夜12時を回ってからなのにはびっくり。すごい量だから腹を空かしていこう、のAの助言にだまされ昼食を軽めにしていたため、お腹が空きすぎて苦しみましたが、まるごと一羽の七面鳥だの鱈料理だのツナのケーキ(甘くない)だの…といった山ほどの彼のお母さんの手料理は本当においしかったです。

 

普通の週末でも必ず近所の何処かで一軒はパーティが開かれているこの国。何故判るかというと深夜2時、3時でも大音量で音楽がガンガンかかっているからです。

以前深夜4時から始まるサンミゲルのお祭りを紹介しましたが、ここメヒコでも深夜だろうと早朝だろうとお構い無しに花火は上がるわ、酔っ払ってハイになった若者は路上で叫ぶわ歌うわ、まあ騒々しいことこの上なし。慣れてしまえば時計のチクタクいうのが気にならなくなるようなもので今は快適に熟睡できますが、初めのうちは日本のアパートとかで騒音がもとで殺傷沙汰になったりする事件を思い出し、「ああ、こういう時にムラムラっと人を刺したくなるのね…」などと思ったものでした。

 

そんなパーティに欠かせない音楽をはじめとしたメキシコ娯楽事情を、ずっと延び延びになっている海賊版天国の話に絡めて今回はお届けしようと思います。

 

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オリジナルのCDは、きちんとしたCDショップで日本と似たような値段(2000円強)で並んでいて、店もお客でそれなりに賑わっているし、レンタルビデオ屋もけっこうあってこれまた1週間2~300円くらいとやはり似たような価格帯で貸し出している。だがこの国を埋め尽くすかのようにそこらじゅうの露店で売られている海賊版のCDやDVDの存在と較べたら笑っちゃうような量の違いである。

 

最新ものからマニアックなもの(明らかに日本製と思われるポルノアニメなんかも山ほど真昼間の路上でデーンと並んでいる)まで、ありとあらゆるCD,DVDがなんと100円から250円くらいで手に入ってしまうのである。その上、機械オンチの私には今ひとつそのシステムがよくわからないが、一枚のディスクに100曲以上収録できるMP3というタイプのCDやらDVDのように映像も見れるVCDなんていうのもバカバカ出回っている(どちらも専用の読み取り機能のあるステレオ等でしか楽しめないが)。

 

ジャケットはカラーコピーしたオリジナルのものが入っていることが多いが、歌詞カードなんかはまずない。ディスクには何にも書いていないか、ヘタクソな字でタイトルが書いてあるくらい。これらがちょっと固めのビニール袋に入っているだけである。しかしこっちの物価からしたらオリジナルはべらぼうに高く感じるし、DVDの映像は時々粗くなることがあるものの充分楽しめるようであるので、法律がユルユルのこの国(註1)で海賊版がなくなるのはまだまだ先のことのようである。

註1)例えば無免許運転。これまた日常茶飯事である。

 

 

ま、こうしたビデオに頼らずとも映画館も日本に較べれば実に安い。確か一人3~400円くらいだったと思う(自分で払ったことがないし、数回しか行ったことがないから不確かでスミマセン)。その上毎週水曜日は二人で一人分の料金で楽しめる。ディズニーやハリー・ポッターなど子供向けは間違いなく吹き替えで、そのほかハリウッド映画など海外ものはたいてい字幕、という状況は日本と同じである。

 

 

しかし、やっぱりなんといってもメキシコ人の一番手軽な娯楽はテレビだろう。

本当にこの国民はテレビ好きである。いろいろなうちにお邪魔したが、たいていどこのうちも一部屋に一台テレビがあり、キッチンも例外ではない。料理しながらテレビ、食事しながらテレビ、食休みに居間でテレビ、寝る前にベッドでテレビ…といった調子である。

そしてこれは働いているときも例外ではない。プエルト・エスコンディードの店員時代、同僚の雇われ店員ファティマはかかさず連続ドラマを見ながら店番をしていて、テレビが壊れたときは非常にクサっていたし(すぐオーナーのマリオは修理に出した)、その上露店でもそのへんの電柱から無断でひっぱりこんだ電気を使ってテレビを見ながら店番をしている始末。

 

いわゆるベースのチャンネルは11局(日本でいえば民放6社にあたる)。しかしケーブルテレビや衛星テレビの加入率も多分すごく高いと思う。映画だけや音楽だけのチャンネル、ARTチャンネル、スポーツチャンネル、CNNやBCC(日本のNHKまでパッケージの選択によっては見れてしまう)…確かに見飽きることがないくらいのチャンネル数を一般家庭ならお持ちなのである。

 

これまた両親のすばらしい教育のおかげで、テレビを四六時中見るという習慣のない私は(子ども時代は一日に確か30分しかテレビは許されなかったし、食事中などもってのほか、その上一度カミナリが落ちてテレビが壊れたときはちょうど姉の受験のときだったので半年テレビのない生活なんかを送っていた。当然友人たちの昨日のテレビの話題…なんていうのはたいていチンプンカンプンであった)、特にテレビがなくてもなんてことはないが、Aはずっと「ニュースだけでも見たい」「今日はサッカーの重要な試合が2つもある!」などといって非常にウルサイ。こんなぜいたく品で時間と電気の消耗品は後回し!どうせなら私としては先に洗濯機が欲しい(現在は小物は手で、大物は10日に一回くらいの割合でコインランドリーみたいなところの貸し出し洗濯機で洗っている)、と日々争いなのだが、どちらも当分我が家には現れそうもないというのが現状である。

 

 

そんな安価で手軽に楽しめる音楽や映画と比べ、この国で非常に高いのがである。日本の文庫本みたいなものが1000円とか、ART雑誌が2000円とかといった調子。高いから読まないのか読者人口が少ないから高いのか、卵とニワトリのようなものでどっちが先だかわからないが、そんなわけでメキシコ人はほとんど本を読まない。プエルト・エスコンディードはそれほど小さな町ではなかったが本屋がなかったくらいである。

自国での出版数が少なく、かなりスペインからの輸入本が多いものの単語がかなり違うので、小学校で先生をしている友人Cは子どもに読み聞かせるとき、いちいち単語を「メキシコ語」に直して読んでいるんだ、と言っていた。こんな調子では子どもの頃から本に親しむなんていうのは難しいから仕方ないとも言えるが、ノーベル文学賞をとった詩人オクタビオ・パスはメキシコ人だが、可哀想に自国では読まれていないんじゃないだろうか。

 

ともあれどうしてこんなにメキシコ人は読書の習慣がないのかずっと不思議だったのだが、誰かがこんな説を教えてくれた。いわく「スペインの統治時代、反逆の精神を持たないようスペイン人によって本を読む習慣を奪われた」。

 

確かに思想を持つのに文章からの影響は計り知れない。いかにもありそうな話である。そのかわりメキシコの歴史や革命のことを広く字の読めない国民にも知らせるため日本の歴史絵巻のような壁画美術がこの国で発達したのだろう。

 

字よりは絵で理解する習慣になったメキシコ人、現在本よりテレビを好むのは仕方ないのか、それにしても今まで読書の話で盛り上がったのは銀ショップのオーナーの奥さんSとだけ。私も子ども時代は本を読むより絵を描いている方が好きで読書の習慣がついたのは高校か大学のときからだが、それでも「モンテ・クリスト伯」だの「カラマーゾフの兄弟」だのといったいわゆる世界文学の古典はとりあえず読んでいたから、店番をしながら彼女とそんな本について熱く語り合ったものだが、今は懐かしい思い出…といったところである。

 

 

以上、メキシコは首都メヒコのソチミルコからみゆまっしーでした。みなさん良いお年をお迎えください。それでは2006年にまたお会いしましょう。

GRACIAS!(2005,12,29)

 

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はあ。2016年に無事ご帰還。さて補足。この後2回ほどメキシコに短期訪問したが、今の娯楽は…ズバリ!スマホです。それでは長時間のタイムトリップにお付き合いいただきありがとでした〜!!

 

おしまい。

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