これは幼いときに父にある衝撃の話を聞かされ、その後ずっとそのホラ(ー)話を最近まで信じていたという、人を疑うことを知らない純粋な一人の女の子の実話である。
その子の名前はみゆまっしー。そう、私だ。
背の順が幼稚園の年長と中1を除けば全て一番後ろ。「前ならえ!」で両手で脇を押さえるポーズを一度やってみたいと密かに願いつつ、その夢は一度も叶えらることのない少女だった。
そんな私がまだ小学校低学年のときのある日のこと。
その日、母はちらし寿司を作っていた。
特にすることのない父と私は、それを手伝う訳でもなくボーッと見ていた(うちわでパタパタくらいはしたかも)。その台所の片隅にあったのがこちら。
そう。高野豆腐である(凍み豆腐も同じ)。
私は何気なく手に取った。
とたん、父がすごい剣幕で怒鳴った。
「こら!みゆまっしー。なんて恐ろしいものを手にするんだ!危ない!すぐ戻せ!」
私はまず、その声にビックリした。
そして父が言った内容にまたビックリして、あわててそれをすぐに元の場所に戻した。 そして聞いた。
「な、なんで危ないの?いつも食べてるじゃん」
「ばかだなあ、お前は。いつも食べているのはちゃんと水分を含んだヤツ。ああなっていたらまず心配はいらない。だがな、みゆまっしー。それはまだ調理前のものだろ。そいつをそのまま間違って食べたらだな、
体中の水分がみんな吸い取られて人間は死んじゃうんだぞ」
ほ、ほんと〜???ってことはつまり・・・
こんなんなっちゃうわけ?ミイラ?ミイラってやつ?
怖い!怖すぎる!
そんな危険なものを簡単にスーパーで買えちゃうって、大丈夫なの?殺人兵器に使われたりしないの?例えば…
火曜サスペンス劇場 フラッシュバックテーマ - YouTube
「オナカすいたでしょ。キャラメルいかが?」
「ああ、ありがとう。」パクっ
う、うう・・・
く、苦しい・・・
バターーーーン ・・・・・・・・。
・・・ふっ。これで三人め・・・
(当時は火曜サスペンス劇場が最盛期だった)
みたいなことが、巷で起こってたりしてるんじゃないの???
で、科捜研のオンナみたいな人が胃のなかの成分を調べても、
「彼の胃のなかからは特に異常は見られませんでした。高野豆腐と・・・」「ああ、フツーだな」みたいなことになっちゃうわけ???
こ、これは完全犯罪、ってやつなのでは…
(どう考えても土曜ワイド劇場の見過ぎ)
戻し方が中途半端だったらアタシ、死んじゃうかもしれない!や、やめとこう。この食材は大人になっても使わない食材筆頭株主1号にしよう。でもってヘンに話して、ヘンな気を起こす人がいたら怖いから誰にも言わないでおこう。うん。
そう誓った日から約20年。
まあ、時効かな(なんの?)。もう、みんないいオトナだし。そんなヘンな気起こさないでしょ。そう思った私は、ある日、友人達に何かの折に
「ねえねえ、高野豆腐ってさ、そのまんま食べちゃうと体中の水分がみんな吸い取られて死んじゃうんだよね。」
と、ちょっとばかり得意そうに話したのだった。そうしたら
「何の話?んなわけないじゃん」
瞬殺。
私は泣きながら実家に帰って、父に訴えた(多少脚色あり)。
「お父さん、アタシが子どもの頃……って言ったよね!」
その返事がコレ。
「そんなこと言ったかオレ?ま、言ったかもな。ガハハ」
それに対する母の言葉がコレ。
「バカねえ、あんた。今まで信じてたの?っていうかその時点で信じたのもビックリだけど。あの当時からパパの言うことは半分ウソで半分冗談って、皆でいつも言ってたじゃないの」
____そうだった。確かに父はいつもそうだった。
しかし。高野豆腐を手にして聞いたその話、なんかとってーーーもリアルだったんだよーーー!だから30過ぎても(正確にいつ気づいたか覚えていない。40は過ぎてないはず)疑いもしなかったんだよーーー!!!
ということで、ご家庭にある殺人兵器。
誰かにイラっとしたら、お一ついかがですか?
効果は…知りません。でもアタシちょっとまだ信じてます。
おしまい (乾物屋の底力。そこぢから・・・コワい!)。
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